
水の中で
In Water
次の上映:7月14日(火) 12:05 @ 早稲田松竹
あらすじ
ぼやけたままでいい。 大学卒業後、俳優業に専念していた青年ソンモは、自主制作で短編映画を監督しようと決意する。かつての同級生ふたりを連れ、リゾート地として知られる済州島へ向かうが、思うようにシナリオは書けず、煩悶しながら海辺を散策していた。そんな折、ひとりの女性との出会いをきっかけに、語るべき物語を見出す。やがて、海辺での撮影が静かに始まる──。 夏の終わりの済州島、自主映画を撮るために集まった男女3人組を描く青春ドラマ。 “新生ホン・サンス”といえる2020年代以降のフィルモグラフィのなかで、とりわけ特異な作品と言われているのが『水の中で』。ベルリン国際映画祭では、上映前にこれからかかる映画は決して映写ミスではない旨アナウンスがされるなど、「全編ピンボケ映画」として物議をかもしたこの映画は観客を戸惑わせる。とはいえ、「全編ピンボケ映画」という名称は必ずしも正しくない。完全にぼやけたカットもあれば、かろうじて人々の顔が判別できるカットもあるなど、意図的に微妙な差異がつけられており、細かな演出によってストーリーや登場人物は自然と理解できる。斬新な撮影手法ではあるが、決して観客を戸惑わせるだけの問題作ではないのだ。映画製作をめぐる映画であり、旅先でのひとときを描いたヴァカンス映画でもある本作は、やはり脚本執筆に行き詰まり海辺の町へとやってくる映画監督の男を主人公にした、過去作『浜辺の女』を思い起こさせる。だが本作の主人公は、恋愛をめぐって男同士で争ったり、ふたりの女性の間を優柔不断に行き来したりはしない。描かれるのは、ひとりの青年が自身の創造性を発見するまでの思索の時間であり、彼の才能を信じる旧友たちとの美しい友情関係だ。初めて映画を監督しようとする青年ソンモを演じるのは、『イントロダクション』でも進路を模索する青年を演じたシン・ソクホ。ソンモの大学時代からの友人で、彼が作る映画の協働者となるふたりを演じるのは、ハ・ソングク(『自然は君に何を語るのか』)と、キム・スンユン(『旅人の必需品』)。実際に3人は建国大学映画学科の同窓生で、シン・ソクホとハ・ソングクは同じ授業を受けた同期、キム・スンユンは後輩と、映画の中での関係性とも重なっている。
- 監督
- ホン・サンス
- 出演
- シン・ソクホ, ハ・ソングク, キム・スンユン